社会福祉法人における評議員会の招集手続

 社会福祉法人制度改革による経営組織のガバナンス強化の柱として、法(平成29年4月1日施行の社会福祉法等の一部を改正する法律)改正前には、社会福祉法人審査基準では原則必置とされていたものの法律上は任意設置の諮問機関と位置づけられていた評議員会が、法改正後には、法人運営の基本ルール・体制の決定と事後的な監督を行う必置の議決機関と位置づけられ、定款の変更、理事・監事・会計監査人の選任・解任、理事・監事の報酬の決定等の決議を行うこととなりました。

このような重要な役割を担う評議員会は、株式会社における最高の意思決定機関である株主総会と対比して考えられるものですが、備忘録も兼ねて、改正法でその招集手続についてどのように定められているかを記しておきたいと思います。

まず、評議員会の招集は、原則として理事が行うこととされています(社会福祉法45条の9第3項、以下では社会福祉法については条文のみ記載します。)。
評議員会には、毎会計年度の終了後一定の時期に招集される定時評議員会と、必要に応じて招集される臨時の評議員会があります(45条の9第1項、第2項)。
これらの規定は、株主総会の招集は、原則として取締役が行うこととし、株主総会には、
毎事業年度の終了後一定の時期に招集される定時株主総会と、必要に応じて招集される臨時株主総会があるとする会社法296条の規定と対応しています。
社会福祉法人の会計年度は、4月1日に始まり翌年3月31日に終わるものとされており(45条の23第2項)、定時評議員会は、通常は、毎年4月から6月の間の定款で定めた月に開催されることになります。

評議員会の招集手続については、45条の9第10項で、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律181条から183条までの規定が準用されています。それぞれ以下のような内容です。

1 評議員会の招集の決定にあたって定めるべき事項(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律181条)
評議員会を招集する場合には、理事会の決議によって(評議員が評議員会を招集する場合には、当該評議員が)、次に掲げる事項を定めなければならないとされています。
① 評議員会の日時及び場所
② 評議員会の目的である事項があるときは、当該事項
③ 前二号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
これらは会社法298条の規定に対応しています。
上記③の法務省令は45条の9第10項により厚生労働省令と読み替えられますが、該当する厚生労働省令(社会福祉法施行規則20条の12(招集の決定事項))で定めるとされた事項は、以下のものです。
評議員会の目的である事項に係る議案(当該目的である事項が議案となるものを除く。)の概要(議案が確定していない場合にあつては、その旨)

2 評議員会の招集の通知(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律182条)
評議員会を招集するには、理事(評議員が評議員会を招集する場合にあっては、当該評議員)は、評議員会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合はその期間)前までに、評議員に対して、書面でその通知を発しなければならない(政令で定めるところにより、評議員の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することもできる。)とされています。
そして、招集通知には、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律181条に掲げられた(上記の①から③)の事項を記載(電磁的記録の場合は記録)しなければならないとされています。
この規定は、会社法299条に対応するものですが、会社法では、期間は、株主総会の日の二週間(書面・電磁的記録による議決権行使を定めたときを除き、公開会社でない株式会社では一週間(取締役会設置会社以外の株式会社である場合でこれを下回る期間を定款で定めた場合にあってはその期間))前までとされています。

3 招集通知の省略(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律183条)
上記のような招集通知に関する規定がありますが、それにもかかわらず、評議員の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく評議員会を開催することができるとされています。
これは会社法300条の規定に対応するものであり、評議員全員が評議員会の開催に同意して出席したことにより評議員会が成立する場合(全員出席評議員会)とは異なり、同意があれば全員の出席までは必要ないと解されています。
もっとも、このような招集手続の省略については、後にそれが争いになった場合、招集手続に瑕疵があったとして、評議員会の決議取消しの訴え、決議不存在確認の訴えの対象となる可能性もありますから(45条の12)、招集手続の省略については、各評議員からきちんと同意書をもらっておくべきでしょう。
同意書(評議員会招集手続についての同意書)は、当該社会福祉法人の評議員として、何時開催の、当該社会福祉法人評議員会において、社会福祉法第45条の9第10項所定の招集手続を省略して、評議員会が開催されることにつき同意する旨の内容となります。

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