社会福祉法人の残余財産の帰属

 社会福祉法人の残余財産の帰属に関しては、以下の規定があります。

 平成29年4月施行の改正社会福祉法は、社会福祉法人を設立しようとする者は、厚生労働省令で定める手続に従って定款について所轄庁の認可を受けなければならないとし、定款をもつて定めなければならない事項の一つとして、「解散に関する事項」をあげています(第31条第1項第13号)。
 そして、定款に、残余財産の帰属すべき者に関する規定を設ける場合には、その者は、社会福祉法人その他社会福祉事業を行う者のうちから選定されるようにしなければならないとされています(第31条第2項)。

 定款については、社会福祉法人の設立時、定款の変更時においてそれぞれ、定款の内容が法律の規定に違反していないか等を所轄庁が審査した上で当該定款の認可がされますから(第32条、第45条の36第2項・第3項)、上記規定に反する規定を定款に設けても、定款が認可されず、設立や定款変更自体ができないことになります。

 そのうえで、解散した社会福祉法人の残余財産についての法の規定をみると、一定の場合(合併、破産手続開始の決定による解散の場合)を除くほか、定款の定めるところによりその帰属すべき者に帰属することとされ、定款の規定により処分されない財産は国庫に帰属するとの規定が設けられています(第47条)。

 同趣旨の規定は、規定されている条項数や規定に若干の違いがあるものの、現在施行されている社会福祉法でも設けられています。

 つまり、社会福祉法人の残余財産の帰属は、合併、破産手続開始の決定による解散以外の場合は、
①定款の規定により、社会福祉法人その他社会福祉事業を行う者のうちから選定された者に帰属する。
②定款の規定により処分されない財産は国庫へ帰属する。
ということのいずれか以外に選択肢は取り得ないことになりそうです。

 このこととの対比で、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律を見てみると、一般社団法人における社員に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定めは効力を有しない(第11条第2項)、一般財団法人における設立者に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定めは効力を有しない(第153条第3項第2号)との規定が設けられているものの、一方で、残余財産の帰属については以下の内容の規定となっているところに違いがあります。

第239条  
1 残余財産の帰属は、定款で定めるところによる。
2 前項の規定により残余財産の帰属が定まらないときは、その帰属は、清算法人の社員総会又は評議員会の決議によって定める。
3 前二項の規定により帰属が定まらない残余財産は、国庫に帰属する。

 つまり、第2項で、残余財産の帰属が定款で定まらない場合でも、直ちに国庫に帰属することにはならず、清算法人の社員総会又は評議員会の決議によって残余財産の帰属を定めることとし、それでも帰属が定まらない場合に初めて残余財産は国庫に帰属するとされているところに違いがあります。
 社員総会や評議員会で定める残余財産の帰属先については、法文上、特に制限が設けられておらず、他方で、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律が、公益認定の基準の一つとして、清算をする場合において、残余財産を類似の事業を目的とする他の公益法人、学校法人・社会福祉法人等所定の法人、又は国若しくは地方公共団体に帰属させる旨を定款で定めているものであることをあげていますので(第5条第18号)、一般社団法人や一般財団法人においては、定款で定めがない場合には、社員総会や評議員会で定める残余財産の帰属先には特に制限は設けない趣旨なのであろうと思います。

 社会福祉法人では上記のように一般社団法人や一般財団法人と規定の構造が違いますし、法人の性質にも違いがありますから、評議員会で自由に残余財産の帰属先を決めるということはできないと思われます。