共有物分割請求(2)~遺産分割と夫婦共有の場合との比較②

 共有分割請求という方法によることの適否については、前回紹介しました遺産分割の場合に、遺産分割前の共有物分割請求が許されず、家庭裁判所での遺産分割の審判手続によらなければならないとした最判昭和62年9月4日最高裁判所裁判集民事151号645頁、家月40巻1号161頁、判例時報1251号101頁、判例タイムズ651号61頁等が参考になります。

 この最高裁判決は、繰り返しになりますが、「遺産相続により相続人の共有となった財産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家事審判法の定めるところに従い、家庭裁判所が審判によってこれを定めるべきものであり、通常裁判所が判決手続で判定すべきものではないと解するのが相当である。したがって、これと同趣旨の見解のもとに、上告人の本件共有物分割請求の訴えを不適法として却下すべきものとした原審の判断は、正当として是認することができ」ると判示しています。

 ここで、原審(高松高判昭和59年2月29日)がなぜこのような判断をしたのかその理由を見ますと、いくつかの理由は述べられているのですが、そのうち、次の理由が夫婦共有の不動産についての共有分割請求の場合との比較ににおいて参考になります。
・民法259条により一部の遺産を自由に個々に分割し得るとすることは、相続人の1人の分割の訴え提起により残余の遺産の分割を困難ならしめて、全体の遺産をどのように分割するかの全体的配慮ができなくなり、かなりの弊害が予測される。
・遺産分割は民法903条の特別受益あるいは同904条の2の寄与分の協議審判等を考慮して分割されるべきであるところ、公開対審構造の地方裁判所において調査官の調査等もなくこれを配分し得るものとは考えられない。
 原審は、このような理由をその理由の一部としながら、遺産分割請求の管轄は家庭裁判所に専属するとしています。
 ここでは、親族間の従前の経過や関係を種々考慮しながら、しかも全体を見ながら個別の遺産の帰属・分割方法に配慮する必要がある遺産分割手続については、家庭裁判所の調査官の行う調査等の手段がない地方裁判所の判決手続(当事者の主張や当事者が提出してきた証拠に基づいて裁判所が判断を下すという審理が行われる)によって妥当な結論を導くことは不可能であるという判断、配慮があるということがわかります。

しかし、そうだとすると、同じようなことは、夫婦の場合の方がより強くあてはまるのではないかという疑問が生じてきます。すなわち、被相続人という自分とは異なる人間が所有していた遺産に対する相続人の関わり方よりも、夫婦共有の場合の共有財産はまさに自分のものですから、より関わり方が強いはずですし、特に不動産については生活の本拠となって可能性が高いですから、分割後の生活に配慮に必要になってくる場合が多いと考えられ、より財産全体を見据えて分割をどのようにすべきかという配慮や判断が必要となってくると考えられるからです。

そして、前回紹介した大阪高判平成17年6月9日判例時報1938号80頁は、理屈としては、夫婦の実質的共有財産についてその分割方法につき、共有物分割請求という方法を用いることができると述べていますが、その裁判の結論としては、別の理屈(本事案のもとでは夫婦の生活状況等も考慮して、夫から妻に対する共有分割請求が権利の濫用にあたるという認定)で共有物分割請求を否定しています。


共有物分割請求(1)~遺産分割と夫婦共有の場合との比較①

 遺産分割前の相続人間で共有状態にある不動産や夫婦が婚姻中に取得した共有名義の不動産を分割したい場合、どのような方法があるでしょうか。

 相続の遺産分割の場合には、遺産分割前の共有物分割請求が許されず、遺産分割の審判手続によらなければならないとされているのは確定した最高裁判例です。
 最判昭和62年9月4日最高裁判所裁判集民事151号645頁、家月40巻1号161頁、判例時報1251号101頁、判例タイムズ651号61頁等は、「遺産相続により相続人の共有となつた財産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家事審判法の定めるところに従い、家庭裁判所が審判によつてこれを定めるべきものであり、通常裁判所が判決手続で判定すべきものではないと解するのが相当である。」としています。

 これに対して、夫婦共有の場合で、夫婦関係が悪化して別居するなどして一方がその不動産を処分したいという意向を持つことがあり得ますが、このような場合、離婚に伴う財産分与の手続を経ないと、不動産の分割、処分はできないのでしょうか。
 この点について、通常の共有関係の解消を定めている共有物分割請求(民法256条以下)によることを認めた判例があります。
 この点について詳しく判示しているのは、東京地判平成20年11月18日判例タイムズ1297号307頁ですが、この判決は、夫婦の共有関係の処理は遺産分割の場合と異なると述べています。
 この判決の理由は、おおまかにいえば以下のようなものです。
 遺産分割の場合は、①相続分(相続の割合)が法律上明確に定められており、②相続財産の範囲に争いがある場合は遺産確認の訴えによってその範囲を後日争えないように確定する手段があるのに対して、離婚に伴う財産分与の場合は、①分与の割合についてそのように確定する手段が無く、②分与の対象についても争いになった場合にそのように確定する手段が確立しているとも言い難い、したがって、共有物分割請求を認めることによって、①共有持分の割合と、②その前提となる分割の対象について後日争えないように確定できるようにすることが必要である。
 非常に理論的な理由でわかりにくいですが、簡単にいえば、①分ける割合と、②分ける対象について、後に争いを許さないような形で確定する手段が離婚に伴う財産分与にはないので、それを共有物分割請求という方法で確定する必要があるということです。

 因みに、上記の東京地裁の判例は、実際上の理由として、次のような判示もしています。
 「夫婦の中には、一方の側からの離婚請求が、有責配偶者であるということ等の理由から排斥される事案もあり、たとえこのような事案であっても、夫婦の共有名義になっている財産の共有物分割請求の途が閉ざされるべき理由はない」
 つまり、離婚できない場合もあるから、そのような場合に、離婚に伴う財産分与の方法しか共有関係の解消を認めないのは不当であるということです。
 確かに、そのとおりであると思います。
 しかし、このことを強調しすぎると、離婚を前提としている場合は、財産分与手続で行えという方向になるのではないかとも思います。
 もっとも、この判決も、「対象となる夫婦共同の財産が夫婦の共有名義でなく、どちらか一方の単独名義となっていることも珍しくない。このような事案については共有物分割を論じる余地はなく、専ら財産分与請求をするしかない」と述べていることには注意する必要があります。つまり、形式上名義が共有になっていなければ、共有分割請求はできないとしているのです。

 別の判例で、大阪高判平成17年6月9日判例時報1938号80頁は、夫婦の実質的共有財産についてその分割方法については、他の夫婦の実質的共有財産と併せて離婚の際の財産分与手続に委ねるのが適切であることは否定できないとしつつ、「夫婦の実質的共有財産ではあっても、民法上の共有の形式を採っている以上、共有物分割を含む、民法の共有関係の諸規定の適用を一切廃除しなければならないとまでは認め難い」として、理屈としては共有物分割請求という方法を用いることができると述べています。
 結論的には上記の東京地裁判決と同じことを述べていますが、どちらの方法を取るのが適切であるかについては、若干の温度差があるように感じます。


特別縁故者に対する相続財産分与(7)

 特別縁故者の範囲⑥~被相続人と関係の深かった法人や団体

 被相続人の生前の言動や生活状況などから、その遺産を被相続人と関係の深かった法人や団体などに寄附して欲しいという遺志がうかがわれる場合があります。
 有効な遺言書が作成されており、そこでそのような遺志が具体化されていればよいのですが、遺言書がない場合や自筆証書遺言が方式不備のため無効となる場合もあります。
 このような場合に、法人や団体を特別受益者と認め、相続財産の分与をなし得るかが問題となります。

 裁判例として以下のものがあります。

 大阪家審昭和42年4月13日家月20巻2号45頁(判例タイムズ229号331頁)は、遺言書が方式不備のため無効となった事案です。
 「叙上の遺言状と題する書面は日附を欠くため遺言としては無効とみるほかはないが、同書面および同書面につき調査した結果によると、被相続人が、死後遺産の処理につき、寝屋川市において公共的な老人福祉事業に活用されることを強く希望していたことは疑いをさしはさむ余地がない。・・・このようにみてくると、被相続人の遺志を考慮し、同人が善良な市民として長年居住し深い関係にあつた寝屋川市を特別縁故者と認め、同市に被相続人の遺産全部を分与するのが相当である。」

 大阪家審昭和57年3月31日家月35巻8号129頁は、遺言書が未完成であった事案です。
 「本来、民法958条の3にいう特別縁故者については、抽象的な親族関係の有無、遠近ではなくて具体的実質的な縁故の内容、濃淡を基準として判断すべきものである。被相続人と申立人ら各自の具体的な生活関係の実質如何による。」
 「申立人A医科大学及び同B会については、被相続人が大学の卒業生であり母校に対し愛情を抱いていたとか同窓会の会員として寄附を行つたり、後援活動をなしたり、その他行事に参加協力したという一事を以つてしては、被相続人との特別縁故関係を論ずるに足りないものである。」
 「しかしながら、特別縁故者への財産分与の制度は、遺言による財産処分すなわち遺贈を補充する趣旨のものと解することができるのであり、果されなかつた被相続人の生前意思の実現をもその根拠とするものということができるところ、この面よりすると、被相続人は完成された遺言書こそ残さなかつたけれども、遺言書作成の過程にあり、被相続人の意思は財産の大部分を母校である申立人A医科大学に寄附し、岡崎育英基金(仮称)と称する財団を設立して同大学の学生の奨学金の基金として役立てたいとするものであつたことが看取できるから、申立人大学は被相続人と特別の縁故がある者と認めるのが相当である。申立人B会に対しては被相続人が如何なる意思を有していたかは忖度することができない。」

 まず、特別縁故者に法人や団体が含まれる得るかについては、異論もあるようですが、裁判例も多岐にわたっており肯定的な考え方が定着しています。
 しかしながら、上記の裁判例にも見られるように、古い裁判例の中には、被相続人の意思の推測を重視し、被相続人との具体的、現実的な縁故関係の有無や程度をあまり考慮せずに肯定的な結論を導いているものが見受けられるところです。
 このような認定の仕方が現時点でも常に通用するかというと、疑問無しとしないところです。
 やはり、自分の遺産を関係の深い法人や団体に寄附したいという場合には、有効な遺言書を作成しておくということが最優先で検討されるべき方法です。

 なお、これから増加していくのかどうかわかりませんが、老人ホームを特別縁故者と認めた以下の裁判例があります。
 
 那覇家石垣支審平成2年5月30日家月42巻11号61頁
「(1)被相続人Aは、別紙財産目録記載の財産を所有していたが、昭和60年6月6日相続人がいないまま死亡した。
(2)昭和61年8月Bが本件相続財産管理人に選任され、民法957条、同958条の手続が行われたが、相続債権者、受遺者又は相続人であるとして権利を主張するものはなかった。
(3)被相続人は、昭和46年4月申立人であるC園に入所措置がとられ、その後死亡するに至るまで、C園で生活をしていた。昭和52年ころから衰弱が激しくなり、歩行、入浴、排便等においても介助を必要とするようになり、同園の職員がその世話をし、死亡に際しては、同園の職員が葬儀を行い、その後も同園の納骨堂に遺骨を安置し、その後の供養も行っている。
(4)申立人は、沖縄県の委託を受けた社会福祉法人沖縄県社会福祉事業団が管理する県立の養護老人ホーム及び特別養護老人ホームであり、法人格を有しないが、独立した施設として、寄付や贈与を受けており、これについて理事長の承認を要するとされているものの、実質的には事後の届出に近い形で運用されており、申立人がその当事者となっている。
「以上の事実によれば、身寄りのない被相続人としては、その機会があれば、世話を受けた申立人に対し、贈与もしくは遺贈をしたであろうと推認され、申立人に所属する職員も施設としてその療養看護に当たってきたものと認められ、申立人には、民法958条の3第1項に規定する特別の縁故があると認めるのが相当である。」


特別縁故者に対する相続財産分与(6)

 特別縁故者の範囲⑤~相続放棄をした相続人

 被相続人が死亡した時に、被相続人に資産はあるものの、負債はあるのか、あるとしてどの程度の負債があるのか見当がつかない場合があります。
 このような限定承認という方法を取るのが一つの方法ですが、限定承認のことがよくわからないまま相続放棄をしてしまう例も多いかと思います(本ブログの「相続放棄をすべきか迷ったとき」の項を参照)。
 仮に、負債がそれほど多くなく相続財産に余剰が出ることになれば、相続財産は最終的に国庫に帰属することとなりますが、限定承認をしていればそのようなことにはならないので、結果的に相続放棄をしたことによって非常にもったいないことをしたとも思われます。

 このような場合に、いったん相続放棄をしてしまったものの、相続債権者や受遺者に弁済をした後、まだ相続財産に余りがある場合に、国庫帰属の前の段階で、相続放棄をした相続人が特別縁故者として相続財産の分与を求めることができるかという問題があります。

 この問題については、本来、負担やリスクを伴う限定承認という手続を行うべきであるにもかかわらず、そのような手続を取らなかったことを考慮して特別縁故者になり得るとすることに疑問を呈する見解もありますが、一般的には、法律上特に制限がない以上、相続放棄をした相続人も特別縁故者となり得ると解されているようです。
 ただ、特別縁故者と認められるためには、単に相続人であるということのみでは足りず、相続人でない者と同様に、具体的、現実的な縁故関係の有無や程度によって特別縁故者となるかどうか判断されることになります。

 相続放棄をした相続人を特別縁故者と認めた裁判例としては以下のものがあります。
 広島高裁岡山支部決定平成18年7月2日家月59巻2号132頁
「 1 本件記録によれば,以下の事実が認められる。
 (1)被相続人Bは,平成13年10月14日死亡し,その相続が開始したが,同人の法定相続人が総て相続を放棄したので,相続人が不存在となった。
 (2)Cは,被相続人に対する債権者として,平成15年2月6日,岡山家庭裁判所に対し,相続財産管理人選任の申立てをし,同年7月9日付けで相続財産管理人が選任された。その後,同管理人の請求により相続人捜索の広告がなされ,平成16年10月29日,その期間が満了したが,その期間内にその権利を主張する者はいなかった。
 (3)抗告人は,平成16年12月1日,相続財産分与の申立てをした。
 (4)抗告人は,被相続人の長男であり,唯一の子供である。抗告人は,出生以来平成4年12月に被相続人の妻である自己の母が亡くなるまで,被相続人と同居生活をしており,その後平成5年に婚姻して,現住所で生活するようになったが,被相続人宅は自己の職場の近所であったこともあって,3日に一度は被相続人宅を訪ね,被相続人の生活に気遣っていた。被相続人は,平成12年ころから肺ガンで入院生活を送るようになったが,約1年間の入院期間中毎月5ないし6万円の入院費用を支払い,週に1度は見舞いに行っていた。被相続人の葬儀は,抗告人が執り行った。
 (5)抗告人は,被相続人の死亡後,間もないころから,同人と生前に交際していたと主張するCから被相続人の負債について,執拗に弁済を求められたため,Cないしその関係者から際限のない請求がされることを危惧し,平成13年10月22日相続放棄の申述をしたが,相続財産についての清算が終了したので,相続財産分与の申立てをしたものである。
 (6)被相続人の相続財産を清算した結果,別紙財産目録記載の財産を被相続人の相続財産管理人が管理している。
 2 以上によれば,抗告人は民法958条の3第1項所定の特別縁故者にあたると認められ,その財産総てを抗告人に分与するのが相当である。」

 この裁判例からもわかるように、被相続人に多額の負債があるため相続放棄をしたものの、蓋を開けてみたら相続財産に余剰があったという場合に、相続放棄をした相続人は全て権利がなくなってしまうかというと、必ずしもそうではありません。
 単に相続人であるというにとどまらず、被相続人との間に、具体的、現実的な縁故関係があるような場合には、特別縁故者に対する財産分与の申立をすることによって相続財産を取得できることがあり得るということになります。


特別縁故者に対する相続財産分与(5)

 特別縁故者の範囲④~過去一時期の縁故と死後縁故

 特別縁故者と認められ得るかについて、何時の時点での被相続人との縁故関係が必要かという問題があります。

 まず、被相続人の死亡時に縁故関係はなかったものの、過去の一時期に縁故関係があったという場合に、特別縁故者と認められる得るかという問題があります。
 これについては、被相続人との間の具体的・現実的な交渉状況や被相続人の意思の推測の結果により、必ずしも否定的に解されるわけではないと言えます。
 認めた裁判例として以下のものがあります。
 東京家審昭和41年5月13日家月18巻12号52頁
 「申立人と被相続人とは20年近くも音信不通の状態にあつたのであるから、申立人が果して民法第958条の3に定める被相続人の特別縁故者に該当するかどうかについては若干の疑問なしとしないが(単に従姉弟というだけでは不可と解する)申立人は戦前および戦争中、被相続人の父のしていた特定郵便局長の下にあつてその事務を補助し、また昭和18年6月に被相続人の父が死亡した後は、本来なら被相続人がその後を継ぐべきところ、被相続人に当時金使いが荒く公金を任せられない状況にあつたため、申立人が暫時局長代理を勤め、したがつてその間種種面倒を見たこと、その後被相続人は財産をほとんど処分して失踪し、唯一つ残つた上記不動産を申立人が事実上管理してきたこと等を合せ考えると、この際申立人を被相続人の特別縁故者として、上記不動産を分与するのが相当である。」
 もっとも、死亡時に縁故関係が存在しない過去の縁が次第に薄れていくことを考えると、上記裁判例のように特別縁故者として認められる実際の例はあまり多くないと思われます。

 次に、被相続人の死後の縁故について、被相続人とその生前に縁故関係があった者について死後の縁故も合わせて考慮し、特別縁故関係の有無を判断することは差し支えないとされていますが、被相続人との縁故がその死後に限られている場合、特別縁故関係が認められ得るかが問題となります。
 いわゆる「死後縁故」の問題です。
 被相続人の死後に、葬儀、祭祀法事を執り行ったり、遺産を管理していたような場合に問題となります。
 この問題については、概ねに否定的に、つまり特別縁故者にはあたらないと解されているのが現在の実務の取扱いであると思います。
 否定する理論的な根拠は、以下の裁判例に現れているところです。
 鹿児島家審昭和45年1月20日家月22巻8号78頁(判例タイムズ256号292頁)
 「民法958条の3の規定によれば、被相続人の相続財産を分与される資格ある者として掲げるところは、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があつた者に限られ、その例示内容からみて、被相続人の生前において、被相続人と特別の縁故関係にあつた者に限定する趣旨と解するのが相当であるから、申立人定夫が被相続人の死後葬儀、供養を行なった事実があっても、その事実は、生前の特別縁故関係の存否又は程度を推測させる事情となりうるに止り、それ自体は特別縁故性を具有するものではないといわなければならない。」

 被相続人の死亡後、葬儀、祭祀法事費用などが支払われた場合の処理については、相続財産管理人の選任後、家庭裁判所が相続財産管理人の申立により、権限外行為行為許可審判を出して支払いがなされるという処理がされるのが通常です。この点については、本ブログの「相続人がいない人の葬儀費用の支出」の項をご覧下さい。

 そして、「死後縁故」を否定する考え方からは、「死後縁故」の問題と同じ理由により、特別縁故者となる者は、被相続人の死亡時に生まれている必要があるという結論が導かれることになると思われます。