相続放棄と生命保険~相続放棄をしても生命保険は受け取ってよいか?~

 相続放棄をした、または、これから相続放棄をする予定であるが、被相続人が自分を受取人とする生命保険をかけていたので、生命保険金を受け取っても問題はないのか、ということを疑問に持つ方がいらっしゃいます。
 民法921条は法定単純承認事由というものを定めており、同条には、相続人が、相続財産の全部又は一部を処分したとき(1号)、限定承認や相続放棄をした後であっても相続財産の全部又は一部を隠匿したり、私に費消したなどの場合(3号)には、単純承認をしたものみなすという規定があるので、生命保険金を受け取った場合には、相続放棄をしても債務も承継することになるのではないかという疑問を持つのは自然な感覚といえるかもしれません。

 このことに関係する問題としては、以前に「生命保険金と相続(1)~生命保険金は相続財産か?」のところで述べましたように、死亡保険金は相続財産に含まれるのかという問題があり、法律上の取り扱いについては、最高裁判所の判例によって、相続財産ではないということで確定しています(税務上の取扱いは別です。)。
 最高裁昭和40年2月2日判決(民集19巻1号1頁)が、被相続人が自己を保険契約者・被保険者として、相続人の一部の者を保険金受取人と指定した保険契約の死亡保険金請求権は、その保険金受取人が自らの固有の権利として取得するものであって、保険契約者や被保険者から承継取得するものではないから、これらの者の相続財産に属するものではないとしているところです。

 したがって、相続放棄をしても、またこれからする予定であっても、自分を受取人とする生命保険金を受け取ることに問題はありません。
 
 古い裁判例ではありますが、山口地裁徳山支判昭和40年5月13日(下級裁判所民事裁判例集16巻5号859頁、 家庭裁判月報18巻6号167頁、判例タイムズ204号191頁)は、上記昭和40年2月2日の最高裁判決を受けてか、「相続人が保険金受取人である場合には、保険金は相続財産に属しないものであるから相続人がこれを処分しても単純承認とはならないこと明らかなところであ」るとしています。