遺留分と価額弁償(2)

 遺留分減殺請求権は、減殺請求の意思表示がなされることによって法律上当然に減殺の効力が生じる生じる形成権であり、減殺の対象物が不動産の場合には、減殺請求権の実際の行使方法としては、不動産の返還請求権や移転登記請求権を行使することになります。
 そこで、返還が行われる場合、実際に返還されるまでの果実の帰属が問題となりますが、現物返還の場合、民法1036条は、「受贈者は、その返還すべき財産の外、なお、減殺の請求があった日以後の果実を返還しなければならない。」と定めています。そして、この規定は、遺贈(受遺者)の場合にも類推適用されると解するのが通説です。
 では、価額弁償がなされる場合は、価額弁償がなされるまでの果実の帰趨はどのようになるのでしょうか。
民法にはそれを正面から定めた条文はありません。

 遺留分と価額弁償(1)の項で述べたとおり、遺留分権利者が価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をした場合は、価額弁償請求権を確定的に取得する代わりに、減殺請求によって取得した現物返還請求権を遡って失うため、民法1036条による果実の返還請求権も遡って失うことになると考えられるため、問題となります。
 この点については、遺留分と価額弁償(1)のところで紹介した平成20年の最高裁判決についての最高裁調査官の解説が以下のように述べています(高橋譲・最高裁判所判例解説(民事篇)平成20年度55~56頁)。
  「遺留分権利者が」価額弁償を請求する権利する旨の「意思表示をした場合、減殺請求により一旦生じた効果がさかのぼって消滅し、遺贈の効力が遡及的に復活することになる結果、遺留分権利者は、減殺請求時から価額弁償を受けるまでの間に発生した遺留分減殺の対象物の果実(例えば、不動産の賃料)についても、これを収受する権利を失うことになるものと解される。そうすると、遺留分権利者が現物返還請求権を行使した場合には、民法1036条により、その間の果実を収受することができるのに、価額弁償請求権を行使したときにはその果実を収受することができないことになって不均衡を生じるのではないかとの疑問がある。しかしながら、この点については、『民法1041条により、価額弁償をなす場合には、減殺請求の日以後の果実を金銭に評価して返還しなければならないものとされている。けだし、1041条の価額による弁償は、現物に代わるべき価額の返還であるからである。』との指摘(新版注釈民法(28)[補訂版]503頁[高木多喜男])があるとおり、価額弁償請求権の価額の算定に当たっては、遺留分権利者が収受することができた果実を金銭に評価してその額を決定することになるも  のと解されるから、上記の不均衡を生ずることはないと考えられる。」
 したがって、この見解によれば、価額弁償請求を行うにあたって、減殺請求の対象が不動産の場合には、果実である不動産の賃料を金銭に評価したものを価額に加えて請求することができると解することができることになります。


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