自筆証書遺言の活用(1)~民法改正による自筆証書遺言の方式緩和~

 よく遺言書の作成は、自筆証書遺言よりも公正証書遺言で作成しておいた方がよい、安全であるという話をききます。
 確かに、自筆証書遺言は、遺言者が自書しなければならないなどの方式が定められていること、家庭裁判所での検認手続が法律上求められていること、遺言書の保管、また本当に遺言者本人が作成したのか公正証書による場合よりも争いになり得ることなどの問題があります。
 しかし、他方で、公正証書の場合は、作成に公証役場での手数料がかかり、特に、遺言書を書き換える場合にはその都度手数料がかかることになります。
 私の実務上の経験でも自筆証書遺言にお目にかかったことは少なくなく、きちんと作成、保管されていれば、有効な遺言書としてしっかりと機能しますし、書き換えも臨機応変にできます。

 従前、自筆証書遺言については、遺言書全文の自書が法律上要求されていたのですが、この度(平成30年7月6日成立)の民法改正によって、自筆証書遺言の方式が緩和され、自筆証書遺言に添付する財産目録については自書でなくてもよいものとされました。
 これにより、財産目録については、パソコンで財産目録を作成したり、通帳のコピーを財産目録として添付したりすることができるようになったわけです。
 従前は財産目録についても全文の自書が要求されており、また、自書している途中で書き損じた(記載を誤った)場合は、厳格な加除訂正の方法(遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に押印する。)が法律上定められているため、多数の不動産を持っている方や預貯金の数が多い方など財産について多数の記載事項がある方は、全文の自書をすることが相当な負担となっていたと思われます。
 このような負担が、今回の民法改正によって軽減され、自筆証書遺言が作成しやすくなったということです。
 
 法律(改正民法)の条文としては、次のようになっています。
第968条
第1項 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
第2項 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
第3項 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

 財産目録については、遺言者が全文を自書することは要しないのですが、目録には全てのページ(裏表両面がある場合は両面)に遺言者が署名押印することは必要とされています。これにより偽造の防止ができるとされています。

 この自筆証書遺言の方式緩和は、平成31(2019)年1月13日から施行されています。
 これにより自筆証書遺言の作成件数が徐々に増加していくのではないかと考えています。

 以上は、遺言書の方式についてのことです。
 遺言書の有効無効については、遺言書に書き込む内容についても問題となりますので、判断が難しい場合は、専門家に相談されるのが良いと思います。

 当事務所においても、相談の際に上記の新しい制度をお知らせし、自筆証書遺言の作成にとりかかっている依頼者の方がいらっしゃいます。


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