相続の承認・放棄の熟慮期間の延長(1)

 旧ブログに掲載されていた記事です。少々古いですが、表現を若干修正して、こちらのサイトに移動させておきます。

 平成23年6月21日に「東日本大震災に伴う相続の承認又は放棄をすべき期間に係る民法の特例に関する法律」が公布・施行され、相続人が、①東日本大震災の被災者であること、②平成22年12月11日以降に自己のために相続開始があったこと、という2つの要件をみたす場合に、熟慮期間(相続の承認又は放棄をすべき期間)を平成23年11月30日まで延長することが認められました。
 それでは、そもそも熟慮期間とは何でしょうか。
 民法915条1項は、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」と規定し、同法921条は、「次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。」とし、同条2号では「相続人が第915条1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。」と規定されています。
したがって、限定承認又は相続の放棄をしようとする人は、原則として民法915条1項に定められている3か月の期間内に相続の限定承認・放棄をしなければなりません。この期間を一般的に熟慮期間と呼んでいます。
このような熟慮期間が設けられているのは、相続を承認するか放棄するかは相続人の自由意思に任せることを前提としたうえで、いずれを選択するかについては、相続財産(負債も含む)について調査することが必要である(単純承認をしたときは、資産だけでなく負債も引き継ぐことになる)一方で、いつまでも選択しないことができるとすると相続に利害関係のある第三者の立場を不安定にすることから、これらの要請の調和を図る趣旨です。

 問題は、この熟慮期間の起算点、つまり熟慮期間をいつから起算するかです。何も知らないうちに熟慮期間が進行していても困ります。
 この点について、民法915条1項では「自己のために相続の開始があったことを知った時」と規定されていますが、これだけでこの問題点が解決したということにはなりません。
問題が生じるのは、死亡した被相続人と没交渉の状態になっていた相続人が被相続人が死亡した事実は、死亡直後に知ったものの、被相続人の財産状態について知ることができない状況にあったまま時間が経過し、3か月以上後になって債権者から請求がくるなどして被相続人の債務の存在を知った場合などです。

 よくあるのは、被相続人が生前消費者金融などから借り入れをしており、死後しばらく経ってから相続人のところへ催告書などが送られてきて債務の存在などを知った場合です。
この場合については、熟慮期間の起算点についての判例理論の変遷がありますので、それも踏まえて次項で述べま
す。


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