共有物分割請求(1)~遺産分割と夫婦共有の場合との比較①

 遺産分割前の相続人間で共有状態にある不動産や夫婦が婚姻中に取得した共有名義の不動産を分割したい場合、どのような方法があるでしょうか。

 相続の遺産分割の場合には、遺産分割前の共有物分割請求が許されず、遺産分割の審判手続によらなければならないとされているのは確定した最高裁判例です。
 最判昭和62年9月4日最高裁判所裁判集民事151号645頁、家月40巻1号161頁、判例時報1251号101頁、判例タイムズ651号61頁等は、「遺産相続により相続人の共有となつた財産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家事審判法の定めるところに従い、家庭裁判所が審判によつてこれを定めるべきものであり、通常裁判所が判決手続で判定すべきものではないと解するのが相当である。」としています。

 これに対して、夫婦共有の場合で、夫婦関係が悪化して別居するなどして一方がその不動産を処分したいという意向を持つことがあり得ますが、このような場合、離婚に伴う財産分与の手続を経ないと、不動産の分割、処分はできないのでしょうか。
 この点について、通常の共有関係の解消を定めている共有物分割請求(民法256条以下)によることを認めた判例があります。
 この点について詳しく判示しているのは、東京地判平成20年11月18日判例タイムズ1297号307頁ですが、この判決は、夫婦の共有関係の処理は遺産分割の場合と異なると述べています。
 この判決の理由は、おおまかにいえば以下のようなものです。
 遺産分割の場合は、①相続分(相続の割合)が法律上明確に定められており、②相続財産の範囲に争いがある場合は遺産確認の訴えによってその範囲を後日争えないように確定する手段があるのに対して、離婚に伴う財産分与の場合は、①分与の割合についてそのように確定する手段が無く、②分与の対象についても争いになった場合にそのように確定する手段が確立しているとも言い難い、したがって、共有物分割請求を認めることによって、①共有持分の割合と、②その前提となる分割の対象について後日争えないように確定できるようにすることが必要である。
 非常に理論的な理由でわかりにくいですが、簡単にいえば、①分ける割合と、②分ける対象について、後に争いを許さないような形で確定する手段が離婚に伴う財産分与にはないので、それを共有物分割請求という方法で確定する必要があるということです。

 因みに、上記の東京地裁の判例は、実際上の理由として、次のような判示もしています。
 「夫婦の中には、一方の側からの離婚請求が、有責配偶者であるということ等の理由から排斥される事案もあり、たとえこのような事案であっても、夫婦の共有名義になっている財産の共有物分割請求の途が閉ざされるべき理由はない」
 つまり、離婚できない場合もあるから、そのような場合に、離婚に伴う財産分与の方法しか共有関係の解消を認めないのは不当であるということです。
 確かに、そのとおりであると思います。
 しかし、このことを強調しすぎると、離婚を前提としている場合は、財産分与手続で行えという方向になるのではないかとも思います。
 もっとも、この判決も、「対象となる夫婦共同の財産が夫婦の共有名義でなく、どちらか一方の単独名義となっていることも珍しくない。このような事案については共有物分割を論じる余地はなく、専ら財産分与請求をするしかない」と述べていることには注意する必要があります。つまり、形式上名義が共有になっていなければ、共有分割請求はできないとしているのです。

 別の判例で、大阪高判平成17年6月9日判例時報1938号80頁は、夫婦の実質的共有財産についてその分割方法については、他の夫婦の実質的共有財産と併せて離婚の際の財産分与手続に委ねるのが適切であることは否定できないとしつつ、「夫婦の実質的共有財産ではあっても、民法上の共有の形式を採っている以上、共有物分割を含む、民法の共有関係の諸規定の適用を一切廃除しなければならないとまでは認め難い」として、理屈としては共有物分割請求という方法を用いることができると述べています。
 結論的には上記の東京地裁判決と同じことを述べていますが、どちらの方法を取るのが適切であるかについては、若干の温度差があるように感じます。


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