節税目的の養親縁組についての最高裁判例

 当ブログの以前の記事(2016年11月9日「節税目的の養子縁組」)に関する最高裁判例(最高裁判所平成29年1月31日判決・平成28年(受)1255号、裁判所ウェブサイト掲載判例)が出ておりますので、フォローして紹介しておきたいと思います。

事案としては、亡Aの長女と二女が、亡Aの長男の子(つまり、亡Aの孫(平成23年生まれ))との養子縁組を、縁組をする意思を欠き無効であるとして争った事件です。
事実経過としては、亡Aは平成24年3月に妻と死別し、平成24年4月、長男夫婦と孫ともにに自宅を訪れた税理士等から、孫を養子とした場合に遺産に係る基礎控除額が増えることなどによる相続税の節税効果がある旨の説明を受け、その後、養子となる孫の親権者として長男夫婦が、養親となる者として亡Aが、証人として亡Aの弟夫婦が、それぞれ署名押印して、養子縁組届に係る届書が作成され役所に提出されたというものです。

最高裁判決は、次のように判示して、養子縁組を有効としています。
・「養子縁組は、嫡出親子関係を創設するものであり、養子は養親の相続人となるところ、養子縁組をすることによる相続税の節税効果は、相続人の数が増加することに伴い、遺産に係る基礎控除額を相続人の数に応じて算出するものとするなどの相続税法の規定によって発生し得るものである。相続税の節税のために養子縁組をすることは、このような節税効果を発生させることを動機として養子縁組をするものにほかならず、相続税の節税の動機と縁組をする意思とは、併存し得るものである。」
・「したがって、専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう『当事者間に縁組をする意思がないとき』に当たるとすることはできない。」
・「そして、前記事実関係の下においては、本件養子縁組について、縁組をする意思がないことをうかがわせる事情はなく、『当事者間に縁組をする意思がないとき』に当たるとすることはできない。」

原審(東京高等裁判所平成28年2月3日判決・平成27年(ネ)5161号)は、「前記1に認定した諸事実を併せて考えれば、本件養子縁組は、専ら、税理士が勧めたA死亡の場合の相続税対策を中心としたAの相続人の利益のためになされたものにすぎず、Aや代諾権者であるB夫婦において、Aの生前にAと被控訴人との間の親子関係を真実創設する意思を有していなかったことは、明らかというべきである。」、「そうすると、・・・本件養子縁組は、Aや代諾権者であるB夫婦に真に養親子関係を創設する縁組意思がなかったことから無効といわざるを得ない。」と判断しており、事実認定をしたうえで縁組意思の存在を否定しています。私の読み方に誤解がなければ、東京高裁の判決は、専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合でも、そのことの故に直ちに当事者間に縁組をする意思がないときに当たるとまでは言っていないように見えます。
そうだとすると、本件の最高裁判決は、相続税の節税の動機と縁組をする意思とは併存し得ることを確認した上で、本件では縁組意思を認めた事例判決としての意味を有するものと思います。


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